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街角ピックアップ~「改心したサーリム」、「改心した五色麺のお菓子?」の政治グループとは????

  • 執筆者の写真: akiyamabkk
    akiyamabkk
  • 2021年8月17日
  • 読了時間: 4分

更新日:2021年8月20日

右中央がタイのお菓子、サーリム。


最近、日本大使館からよく来るのが、コロナと並んで、デモへの警戒を呼び掛けるメール。「インターネットなどの情報によると、本日午後5時ごろから、独立記念塔付近で、複数のグループが集会を予定しています。不測の事態が発生する可能性がありますので、同地区への立ち入りは極力避けるようにしてください」・・・みたいなやつである。


大使館もネットで情報をとっていることがわかる文面だが、いちいちそういう事をチェックする時間がないバンコク在住の日本人にとっては便利な情報ソースだろう。


この中に出てくる反体制グループの名前がなかなか面白い。一番オーソドックスなのは「人民党」これは、1932年代に「立憲革命」を起こしタイを立憲君主制に移行させた政治グループの名前からとられている。名前からすると過激な革命政党のように聞こえるが、実態は、留学組の青年将校と文民官僚が、王室関係者を担いで起こした体制内変革である。だから現在のタイ王国でも、この時の憲法発布は祝日として祝われる。


他国の人民党が概ね「革命左派勢力」であるのに対して、これが、タイの特殊性ともいえるが、訳しかたの問題でもあると思う。人民という訳語にあたるラーッサドーンというタイ語には「臣民」というニュアンスもあるのではないか?


人民党のリーダーでは、小太り眼鏡で愛嬌のある「ペンギン君」が有名である。先ごろ、再度収監され、二度目のコロナ感染が報道されている。肥満体質で、喘息の持病があるらしいので、病状が心配である。支援者は、早速、入院治療を当局に要請しているが、政府側としては「札付き」の活動家なので受け入れられるかどうか?「死なれては、デモに油を注ぐ」と慎重に対応するかもしれないが。


「タル―ファー村」と名乗って昨年一月から首相府前でデモをしているグループがある。彼らの要求は「人民憲法の制定」「不敬罪の廃止」「政治犯の釈放」であり、タイ政治の文脈では、相当に過激な主張であるため、当初は「リーダーのいない集団」とされ、メディアも顔消しで報道していた。しかし、上記の「人民党」のリーダーが実質的な指導者であることが、おいおい明らかになったようだ。


「もう我慢しないタイ人のグループ」これは旧赤シャツ系、タイ政治ウォッチャーにはお馴染みの、イガクリ頭のチャトポン・プロンパーン氏が率いている。おそらく一番動員力がある反体制派グループである。「進歩派グループ」、これは、自らの政党が解党判決を受け政治的権利をはく奪されたタナトーン・チュンルアンキット元タイ新未来党元党首とその支援者のグループ。政治的傾向としては、赤シャツよりは左、人民党よりは穏健である。


この他に、かっての保守が、現政権批判に向かうというパターンがあり、その中には「上流階級のルークナット」などと称する変わり種もいる。この「ハイソ(ハイソサイエティの略)のナット」という人物は先日のデモで催涙弾を受け、失明の危機にあると報道されている。プラユット氏のクーデターに道を開いた一連のデモを支援したが、現政権のコロナ失政にたまりかねて政府批判に転じたというストーリーが売りにしている。


※ナットは本物の富裕層の出身で、父親は不動産開発会社ノーブルディヴェロップメント社のオーナー、母親は、元財務相(アムヌアイ・ウィラワン)の娘、親族にはメディア企業の経営者などもいる。ルークナット氏が、8月13日のデモに参加した際、催涙弾を受けて片目を失明したとし、デモ制圧の警察部隊を刑事、民事の双方で訴えると、家族が記者会見を開いた。


この文脈(保守派からの転向グループ)でよく出てくるのが「改心したサーリムのグループ」である。このグループ名を理解するには、いささか、これまでのイキサツとタイのお菓子について知る必要がある。


今から10年ほど前、赤シャツと黄色シャツの政治対立に「飽き飽きした」と、「様々な色のグループ」と称する人たちが街頭に出たことがある。彼らは、赤にも黄色にも組しないという、国民のいわば「声なき声」を代弁しようと目論んだのだが、赤シャツグループや、リベラル・左派人士からは、「国民の声を偽装する保守派」として批判を浴びた。批判者の一人が、彼らを嘲弄して呼んだあだ名が、タイの屋台でよく見かけるお菓子、サーリムなのである。この色とりどりに鮮やかな甘ったるいお菓子に例えて、保守派の政治グループを皮肉った言葉なのである。

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ソンバット・ブンガムアノン氏

そして、このサーリムというあだ名をつけて、「中立」を標ぼうする保守派グループを揶揄した張本人が、現在脚光を浴びている「パーキングデモ」(大通りに大挙して車やバイクを止めて、クラクションを鳴らして政府批判の意思を示す、いささかはた迷惑なデモ。デモは何でも多少迷惑なものだが)のリーダー、ソムバット・ブンガームアノーン氏だ。タクシン氏を追放した2006年のクーデタ以来、一貫してクーデターに反対してきた赤シャツグループの闘士である。大使館情報によると、「改心したサリームのグループ(改心した五色麺のグループ)」が、ソムバット氏の「パーキングデモ」に合流するのだという。「ワクチン調達で下手を売ったことで、プラユット首相は保守派の支持も失いかけている」という虚実皮膜のストーリである。「めーぐるー、めーぐるーよ、時代は巡る」とでも歌うしかない。


<了>

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