不定期テレビ日記 2021年7月
- akiyamabkk

- 2021年7月28日
- 読了時間: 19分
更新日:2021年9月16日

2021/07/04
一回目のワクチン接種から一か月たった。あれからタイ政府のワクチン接種方針は二転、三転し、最近では、高齢者、慢性病の患者に優先接種する方針に戻った。家人の7月11日の予約はキャンセルとなり、ワクチン入手の見通しが立った時に再募集するという。その代わり、糖尿で通院しているものや、明らかな肥満のけが或る者はワクチンが打てている。デルタ株の流行が始まってから、重症者は高齢者や慢性病の患者とは限らなくなってきた、というのが一般的な見方かと思うがどうだろう。政府のワクチン政策に対する不満は相当なもので、報道を通じても伝わってくるが、普段は政府びいきのうちのものも不満を言い始めた。シノバットを作っている製薬会社が、CPの同族会社だと言っていたが、本当かどうか。なぜ高くて(インドネシア政府より高く買わされたらしい)、効き目の怪しいワクチンを買うのか、という政府に対する疑惑の答えを、そこに見出しているわけだが。
今日のソラユットの番組、コロナ死の悲惨なケースをいくつも取り上げている。ナコンナヨク県の副知事が死に、その妻が死に、昨日はその40代の息子が亡くなった。バンコクのあるアパートでは、コロナで母親が死に、父親が入院中で、目の不自由な11歳の男の子が、アパートで一人で暮らしている。大家さんが男の子の面倒を見ているが、濃厚接触者だから近づくことができず、紐で食事の入った袋を釣り上げて渡している。男の子は4階くらいに住んでいるので、窓から釣り上げて弁当を受け取るのである。男の子がやたらに元気な声で、「はいOKです、準備できました」と答えるのが余計に不憫に思われる。ソラユット氏のニュース番組がこういう報道をしたら行政は動くだろう。父親が早く良くなるといいのだが。また、この番組で、コロナ感染者輸送用のバンと運転の労役を提供してくれるボランティアを募集していた。コロナ感染者が急増して、バンコク首都圏の病床数がひっ迫している。バンコクで感染した人が地元で治療したいと言う場合、地元の病院まで運び届けるサービスを提供しようというものだ。病人もその方が’安心だろうし、感染が集中する首都圏の医療負担も軽減できる、一石二鳥のアイディアということだろう。緊急事態におけるボランティアの組織は、タイのテレビの得意技である。スマトラ沖地震の津波の時も、バンコクを襲った大洪水の時もそうだった。とりわけソラユット氏の番組はそれでずいぶん人気を高めたものだ。今回もそれを狙っているのだろうが、人助けになるのなら、シニカルに見る必要もない。先の盲目の男の子のケースなど、面倒を見ている人が「ソラユットの番組ならば」と助けを求めてくるのだから、もうそれは一つの社会的機能を備えていると言ってもよいのだ。
2021/07/09
知り合いの店の従業員、タクシーで200バーツかけて(一時間はかかったろう)政府の運営するPCR検査場に行って、朝4時から並んだのに検査を受けられなかったという。前日から並んでいる人がいるのだ!彼女は、行きつけの屋台のおじさんがコロナに感染したので、検査を受けに行った。ただ不安だからというだけではなく検査に行く理由があったのである。カオソットオンラインが、前日12時前から首相府近くの検査場に並んでも検査が受けられなかった、ある初老の女性のことを紹介している。なんとこの人は前日に自分の母親をコロナで亡くしているという。これほど検査を受ける理由のある人が他にいるだろうか?タイ人がパニックになって検査に殺到しているのか?それとも、感染者の増大で検査まで手が回らなくなっているのか?おそらく後者だろう。民間病院の情報を検索してみても検査可能な数は50~100,多くて300くらいだ。これほど周りに感染者が出始めると、濃厚接触者だけでも大変な数に上るだろう。検査の供給体制が追いつかなくなってきている。これまでタイ政府は、原則感染者は入院させる方針だった。(「野戦病院」はそのためにある)しかし、この方針も転換して、無症状者や軽症者は自宅やコミュニティで自己隔離させることにするという。今日、対策本部のスポークスマンがそう発表した。ベッド数を増やすのは比較的容易だが(段ボール製のベッドを使ったりしている)、世話をする医療スタッフの数が足りなくなっているのだろう。
カオソット紙は、マティチョングループ系列の日刊紙で、マティチョン紙が知識層向けのクオリティ紙なのに対し、庶民向けの大衆紙である。印刷された新聞を廃止して、オンラインバージョンに力を入れた結果、現在ネットメディアとしてはアクセス数第一位だそうだ。この新聞のフェイスブックをフォローしているが、政治、社会面から芸能欄まで、幅広くカバーしていて、ここをフォローしていればタイのニュースはだいたい大丈夫という感じである。外国人向けには英語版のオンラインニュースも出していて、バンコクポスト、ネーションなど老舗英字紙にとっては脅威だろう。
マティチョングループは「タイの朝日新聞」と言っていいくらいのリベラル系なので、現在の政府には批判的である。タクシン、赤シャツ支持といってもいいかもしれない。メディアがクーデターで成立した政権(一応選挙でみそぎを得たが)を批判するのは当たり前のことだが、「ひいきの引き倒しの逆バージョン」のような批判も多い。カオソットはその系列紙だから、今回のプラユット首相の「コロナ失政」でも批判の急先鋒である。先ほどの「朝まで待って検査を受けられなかった高齢女性」のケースもカオソットのニュースだが、別の悲惨なケースもこのオンラインニュースが報道している。
寝たきりの母親と兄を介護しているある初老の男性がコロナに感染した。この人は本当は病院の看護が受けられたのだが、母親と兄の面倒を見るために家に残った。二人は検査を受けていなかったが、コロナに感染していることは、容易に予想がついたのである。男性は悪化していく自分の病状にもう先は長くないと思い、フェイスブックで「今夜が最後だろう。また生まれ変わっても兄弟でいよう」と兄あてにメッセージを残す。幸い、メディア(またソラユット氏の番組である!)がこのFBを取り上げ、3人は入院することができたが、母親は入院したその日に亡くなった。死因はコロナ感染によるものだったのである!
最近、こういう悲惨なニュースが毎日のように報道されている。プラユット首相は三か月の給料を返上したが、国民の怒りはその程度では収まりそうもない。しかし、一方で「デモなどしている場合か!」とも思うのである。
2021/07/15
アパートの住人で初めてコロナによる死者が出る。今まで感染者は7,8人出ていて、一人を除いてすべて退院したと聞いていたが、その一人が亡くなったのか。まだ50歳前の女性で、家人より少し若いそうだ。以前はよく話をしていたが、コロナが流行し始めてから部屋に引きこもっていたという。糖尿病を患っていたので、感染を恐れていたのだ。中学二年の娘がいて、別の家に住む高齢の父親がやってきて、よく遊びに連れ出していたと聞く。娘が感染しているかどうかはわからない。感染していないことを祈る。もし感染していたら自分を責めるだろうし、父親を恨むだろう。本日の新感染者数9186人、死者98人。状況好転せず、死者は新しい記録を作った。アムというセクシー女優が、自分のSNSでCall Out(政府を批判する言説をなすこと。流行語)せずに、犬の話をしているのが非難され「ドラマされた」(SNSが炎上することをこう言うのだそうだ)らしい。そんなこと、本人の自由ではないか。どこにも馬鹿な人はいるもんだと思う。左右に関わらず、自分の意見に同調しない人間に集団で圧力をかけてくるこの手の連中が一番嫌いだ。紅衛兵。
2021/07/16
また人気女優がネット紅衛兵の標的になった。蛇の化身を演じてブレイクしたテーオという中堅どころの女優だ。コロナ感染を公表した写真が犬を連れていたことから、特別待遇を受けていると批判を浴びた。王党派の映画監督で人気俳優のポンパット・ワチラバンチョンの秘蔵っ子だった女優だから、そのあたりが、ネット紅衛兵の気に入らない理由かもしれない。ポンパットは前の国王が存命の頃、王室への批判者に対して「父親が気に入らないなら家を出ていけ」と言い放った人だ。
タイポスト記事。トンブリ病院グループのブン医師、「契約書を弁護士とチェック中、今晩中にも、サインして送り返す」と明言、「全体で1000万回分購入する。今月中に100万回分、今年中に500万回分入ってくる」語る。一方で、ロイターの取材によると、ファイザーのスポークスマンが「民間の会社と契約した事実はない。タイ保健省と疾病防止局がファイザーの唯一の交渉相手である」と述べている。いったいどちらが本当なのか?韓国でも同じようなケースがあり、ファイザーが「民間とは契約しない云々」と回答し、結局ガセだったと記憶する。トンブリ病院グループの株はこの情報を受けて、6パーセント近く上がった。
アストラゼネカワクチンに関して。保健省の高官がテレビ番組に出演して、調達計画の遅れを認めた。今年末までに6100万回分調達する予定だったが、来年の5月までにずれ込むという。契約書には供給総量の記載はあっても期限は入っていないからだというが、これは日本など他の国も同じだろう。だから皆、調達に苦労しているのだ。アストラ社との契約によるとタイにあるワクチン工場の生産能力のうち40パーセントが、タイ国内への供給に回される。生産力は毎月1500万回分だから国内向けは月60万回分。6100ドーズを調達するためには10か月、つまり来年の5月までかかるという計算だ。タイ政府は、輸出分を減らし、タイ向けの生産を増やすようにアストラ社と交渉するというが、簡単な話ではないだろう。野党議員が「非常事態法を発動し、強制的に国内に振り向けさせろ」と発言しているが、それは土台無理な話である。
2021/07/17(土)
またアパートから一人感染者が出たという。ちょっと離れた棟の人だが、アパートに引きこもっているからといって安心できない。孫の面倒を見る家人は、近所のママ友と付き合いがあるから、そこに持ち込まれればアウトである。これは逆もそうで、口には出さないが、毎日出勤する娘がいる我々のことを向こうは心配しているだろう。
トンブリヘルスケアグループ会長のブン医師、証券取引所に警告されて少しおとなしくなった。このところのファイザー話で、一昨日は株価が12パーセントも上がった。平均株価の値上がりは一パーセントに満たないのだから、明らかにワクチン契約のニュースが効いたのだろう。しかし、ロイターによると、ファイザー側は「タイのいかなるEntityとも交渉していない」と答えている。これで、チュラポン病院とか赤十字に代理購入してもらったという線も消えた。(タイ人の間ではそういう憶測が飛び交っていたのである)ファイザー側に嘘をつく必要は微塵もないのだから、これは事実とみていい。
どうも、韓国であった、大邱市の市長が謝罪したケースと似ている。ファイザー側が否定して中央政府が契約の内容を調べてみたら、カリフォルニアの会社のはずが、ポルトガルから連絡をとってきていた。話に乗ってしまったのが、政府のワクチン政策批判の急先鋒だったことも共通している。ブン医師が、これからサインするという肝心な時に口をつぐんだのも、怪しいと勘ぐれないことはない。が、大邱の市長がビジネスに素人だったのに対して、ブン医師は一応プロの経営者のようだから、こんな単純な詐欺に引っかかるだろうか。韓国のこのケースはタイでも報道されていてるから、知っていたと思うが・・・
新しい法律が施行されて、「国民を不安に陥れるような」ニュースを流せば、たとえそのニュースが事実だとしても、罪に問われることになるらしい。複数の新聞がそう指摘していた。これでは、政府が気に入らないニュースは何でも取り締まれることにならないか?
2021/07/18(日)
隣人たちの噂によると、このアパートの隣とその隣のソイで検査を実施したところ大変な数の陽性者が出たらしい。数日前から、抗原検査キットを使って、政府が訪問形式の疫学調査をやると報道されていたので、おそらくその結果として大量の陽性者が出たのではないか。以前家人がよく買っていた屋台のラーメン屋も、家族全員が感染して店が出ていないという。Bubble&Seal 作戦と言って、積極的疫学調査によりクラスターを特定し、感染が周辺に拡大する前に隔離する作戦をとっているが、ここまで感染が広がっているときに実効性があるだろうか?しかし、ほかにどうやりようがあるかと言われると、それ以外、ないような気もする。
トンブリグループのファイザー購入の件、医師会を通して購入したという情報があるメディアを通じてリークされた(プラチャチャートトラキット紙)が、たちまちのうちに医師会が公式に完全否定した。医師会は多少政府の予算支援はもらっているが、政府機関ではなく、ワクチン購入の主体となれる5つの政府機関、公的団体にも入っていない。だから医師会はワクチン購入の主体とはなりえないと言うのである。また事実関係としても、ワクチン購入の受け皿となった事実はないと、団体の幹部が否定している。どうも、このワクチン話を、一日でも長く生き延びさせようtという力がどこかで働いているような気がする。それが政治的なものなのか、株価のつり上げが狙いなのか、大手病院企業の体面を守ろうとしてるのか、わからないが・・・。ワクチン供給の不足は、全世界が直面している大問題で、ちょっとした交渉テクニックでどうにかなるものではないと思うのだが、「表向きはそうだが、裏で手を回せば話は違うのだ」という類の話が、タイ人は好きなのである。
タイ政府はなぜCovaxでワクチンを調達しないのか?、と批判されている問題で、政府関係者が反論している。要は、Covaxの取り決めで、アセアンの中で寄付を受けられるのは、ラオス、カンボジア、ベトナム、フィリピン、ミャンマー、インドネシアの6か国となっており、中進国以上とみなされるタイなど4か国は優遇措置が受けられない。また、個別交渉が許されず、Covaxの提示する条件を一方的に飲まされるから、製薬企業と個別に交渉したほうが、結果的に安くつくというのだ。しかし、結果として隣国のラオスなどは、Covaxの枠組みでファイザーなどの効果の高いワクチンを入手している。常日頃ラオスを低くみる傾向のあるタイ人としては気に入らないわけだ。
2021/07/19(月)
家人のワクチンの予約がやっととれた。来月の4日。シノファームだが、打たないよりはマシだろう。重症化の抑止には多少の効果があるのではないか。長女と下の娘、その旦那の3人が予約をトライして、8時の受付開始に6時半から待機して気合を入れていた下の娘がゲット。予約が埋まるのに一時間かかったというから、多少の余裕はあったようだ。やはり中国製というところに引っかかる人が多いのだろうか。受け皿になったのは、チュラポン女王の作ったがん治療のための医療機関。接種場所はラムカムヘン大学で、混雑をさけるために一日50人ずつ接種するという。代金は1600バーツ、余裕のあるものからは取り、そのお金で余裕のないひとを助けるのだそうである。
一週間ほどの間に、両親をコロナで立て続けに亡くした娘が、テレビのインタビューに出ていた。もう聞きたくないという人が多いのだろうか、ソラユット氏がニュースを読む前に「もう落ち込むようなニュースは嫌だという人はチャンネルを換えてください。現実を知りたい方はこのまま聞いてください」と前置きしていた。このあいだ、ソラユット氏がCM時のスタジオで涙をぬぐう写真が流れていたが、「ニュースの肉体労働者」を自称する彼にしても、耐え切れずに涙を流すことがあるらしい。自分は、これを「やらせ写真」だとは思わない。ソラユット氏のニュースを読む声が、時折震えがちになることが確かにあることを知っているからだ。
そのニュースに戻ると、母親が体の異常を訴えたのが今月の12日。ラピッドテストで検査してみると陰性と出た。しかし、症状は悪化するばかりなので、PCR検査を受けに行くが、どこも順番待ちで検査できず、そうこうしているうちに母親は亡くなってしまう。葬儀が終わらないうちに、今度は父親の状態が悪くなり始めて、病院に連れていくが、「感染を正式に証明するものを持ってきてください」と言われ、検査場所を探しまわる。お寺にある或る検査場で待つことにしたが、症状が出ている患者を怖がって車から降ろしてくれない。「ここに電話してみたら」と電話番号を書いた紙を遠くから投げてよこした。その番号に電話しても誰も電話にでない。しばらくして父親は車の中で息を引き取った。
おそらくこの家族は、母親に症状が出る一週間前までは、ウィルスの感染拡大に不安を覚えながらも、平穏な暮らしが続くと信じて暮らしていたに違いない。今の我々がそうであるように。7月12日を境に、世界がいきなり暗転したのだ。恐ろしいことだ。他人ごとではない。それも、十分な治療が受けられたならまだしも、これでは諦めきれないだろう。どういう事情があるにしろ、プラユット首相の評判が悪くなるのは仕方がないと思う。
2021/07/22(木)
芸能人の政府批判が一種の流行りになっているが、それを抑え込もうとする妙な動きがでてきた。政権与党の司法人権委員会のアドバイザーなる人(元同党の国会議員らしい)が、政権を批判した20数名の芸能人の捜査するように警察に請願したのだ。しかし、この人がメディアのもう批判を浴びると、委員会の委員長は「そんな奴知らない」と突き放し、政府側は一斉に、トカゲのしっぽ切りモードに入った。やり方が稚拙かつ露骨すぎるし、どうやら、この人が政権に取り入るために独断でやったことらしい。政府がやることは、もう少し洗練されている。例えば、ファクトチェック機関として、Anti-Fake News Center Thailand という機関があって、一応中立のオンブズマン的組織のような体裁なのだが、サイトのPR欄を見ていみると、プラウィット大将(副首相、政権与党の党首)が訪れて、警察関係者にフェイクニュースの取り締まりを強化する指示を出したりしている。
The Matter というリベラル左派系のニュースサイトが、「では、政府関係のファクトチェックもやるんでしょうね」と、アストラゼネカ調達に関する保健省の発言を時系列で並べて「これはフェイクニュースでしょうか?歪曲されたニュースでしょうか?それとも正しいニュースでしょうか?」とこの組織に公開質問状を出していた。
要は、この組織がフェイクとみなしたニュース(ご丁寧に、拡散しないで!といちいち記している)については、IT法に照らして罪が問われる場合があるということだろう。
話をもとに戻すと、ニュースキャスターのヌム・カンチャイがこの政権与党の「法律人権顧問」を昼のニュースに招いて、大激論し、ほぼ完ぺきに論破していた。「シノバックはmRNAワクチンと同じくらい効果があるとマレーシア政府が発表した」として(そういうニュースがあったことは事実である)、それ以外のニュースはフェイクであるとする「顧問」に対して、すぐさま番組スタッフにファクトチェックさせ、同じマレーシア政府が「今後はシノバックを購入しない」と会見で述べているロイター電を突きつけた。ここはなかなか見ごたえがあった。「政府は効果のあるワクチンを無料で国民に提供してください」というある人気女優のごく控えめな発言さえ「フェイクニュースを流布した」として捜査の対象としたこの「政党顧問」に、事実というのは複合的に判断するものだという、ごく常識的な知恵を示したのである。また、議論の最後には、ある憲法学の権威のコメントを引き、「政府は国民の代表としてあるもので、国民の最も厳しい批判を受け入れるべき存在である」として、タイ政府が「民主政府」を標榜するならば、警察権力によって批判を抑え込もうとすべきではないという、ごく真っ当な原則論で番組を締めくくっていた。ヌム・カンチャイという人は、もともと俳優、タレントで、頭が切れて弁が立つし、印象もさわやか。たいしたものである。今、スラユット氏と並んで、タイのナンバーワンニュースキャスターだろう。
2021/07/24(土)
Yさんよりの情報。昨日、スクンビット33のフジスーパーに行ったら、コロナ感染者が出たため休業していたという。明日当たり行くつもりだったので、教えてもらって助かった。同じ通りのパン屋さんも店員から感染者が出て、少し前から2週間ほど休業中である。フジスーパーは、そろそろ開けるらしい。(25日から?)Yさんは、60歳以上のワクチン接種に数日前に応募したら、昨日メッセージが入っていて、バンスーの接種場に来いとのことだった。条件さえ満たせば(60歳以上、慢性病、妊婦のどれか)、意外と簡単に予約がとれるようだ。
2021/07/28(水)
8月4日にワクチン接種を控えているので、家人がビールをやめている。ちょうど日曜から雨安居入りだし一月くらいやめるという。自分は、前のワクチン接種の時からアルコールをやめている。もっともノンアルコールビールを飲んでいるので、禁酒という感じはしない。
明日から、18歳以上の一般国民に対してもワクチンの受付が始まる。しかし、接種場所がバンスーで、人でごったがえしてクラスターが発生する恐れが云々されている場所である。シノファームは、あてにならないが、やらないよりはましだろう。こちらは、一日50人限定の接種なので、混雑することもない。あてにならないというのは、つい先日のニュース。ペチャブン県のサハユニオン工場では、8000千人の従業員のうち9割がシノファームの2回接種を済ませていたが、3000人が感染しているのである。「重症化した人は少ない」とも言われているが、工場の従業員なのでもともと壮年期の健康な人が多いからではないか?
お寺へ高齢の父親を捨てた話、別に書いたが、姥捨てをした夫婦が特定された。父親はバンコクでタクシー運転手をしていて、長いこと子供とは離れて暮らしていた。最近、体の調子が悪くなったのでタクシー会社の人間が、ベプリー県に住む娘夫婦のところに父親を送りつけてきた。あまり愛着の持てる父親でもなし、娘は処置に困って、父親を寺に押し付けようとしたらしい。コロナに感染していることは知らなかったというが、今のご時世でその事を疑わないはずはない。父親が望んだから、というのは、あるいは本当かもしれない。久しぶりに会った成人した娘にケンもホロロの扱いを受けたら、いたたまれなくなって、そう言わされるのも無理はない気がする。バンコクに働きに出て田舎の家族と切れてしまった、こういう老人も今、結構多いだろう。他人ごとではないので同情する。とりあえず、出身のコンケーン県の病院に入院できたのだから、親不孝な娘夫婦の怪我の功名だったともいえるだろう。コネがなければ、ニュースにでもならないと、行政がなかなか動いてくれないというのも、また事実ではないか。
今日のニュース。夫はコロナに感染して隔離中、妻は病院を回っても検査さえしてくれず、アパートの部屋で薬草を煎じて飲みながら闘病していたが、ついに力尽きて昨日亡くなった。7歳の娘が、朝起きて「おかあちゃん、ラーメン作って」と言っても、母親が起きてこないので、部屋の前で泣いているところを、近所の住民がみつけたのだという。PPEという宇宙服のような完全防御服をつけて、慈善グループの人たちが部屋に入ってみると、女性の死体のわきには、さまざまな漢方薬、痛み止め、解熱剤、薬草を煮る電熱器と鍋が散乱していた。女性は、娘にうつさないように、小さなアパートの客間の方に娘を寝かし、自分は奥で寝ていたという。
夫はサムットプラカーンのホンダの工場に勤めていたので、感染が分かってから、フアランポーン駅(バンコク中央駅)の近くのホテルに隔離療養中だった。妻は市場でものを売っていたというから、あるいは感染源は奥さんの方かもしれない。行政の対応がもう少し積極的だったらと悔やまれる。ニュースにでもならないと面倒を見てくれないと国民が思ったとしても無理はないのである。ホンダももう少しなんとかできなかったのか?個人による抗原テストが解禁になって、キットは一個400バーツくらいなのだが、多くの場合、20個くらいからオーダーを受け付ける。一人では買えないのである。そういうものを会社で購入して検査して医者に証明書を書いてもらうとか、ホンダ側として何か方法はなかったのか?結果として、重体化した妻の方が制度の網から零れ落ちることになった。




