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◇遥かなる山の呼び声(1980) 感想文

  • 執筆者の写真: akiyamabkk
    akiyamabkk
  • 2024年7月24日
  • 読了時間: 3分

※映画のネタを割っています。ご注意を。


山田洋次の映画だからそれなりに面白いが、「幸福の黄色いハンカチ」の二番煎じの感は否めない。全体に、「黄色いハンカチ」よりも笑いが少なく、話しが平板にシリアスである。


この映画でも、高倉健は、「一応」、ヤクザではない。が、ヤクザ映画をやっている時も、健さんはいつも「いいもん」ではあったわけで、「やむに止まれぬ事情から人を殺める」という意味では、主人公の心情はヤクザ映画のそれとほとんど変わらない。100パー自らの愚かさから人を殺してしまい、自分の過ちを真剣に悔やんでいる「幸福の黄色いハンカチ」の主人公からは、相当、退歩したキャラクターである


一種、形を変えた任侠映画とでも言うか、※マゾナルヒロイズム(笑)の映画、とでも言おうか、任侠映画のお約束を北海道の大自然に持ってきた、ホームドラマっぽい味付けの、いわゆる一つの「健さんの映画」と言えると思う。


※マゾナルヒロイズム マゾヒズム、ナルシズム、ヒロイズム、三位一体の映画という意味。今作った私の造語。高倉健や鶴田浩二が主演する東映任侠映画や、この映画などがそうである。


一般的には、最後のシーンがサプライズ的な感動を呼ぶのだろうが、自分などには、高倉健がどこで横を向き、どこで鼻をすすり、どこで一礼するかまで読めてしまう。だから、この「感動のラスト」より、武田鉄矢が少しだけ出てくる、冒頭近くのシーンの方が印象に残った。


結婚したばかりの武田は新妻を連れて、北海道に開拓農民として暮らす従姉(倍賞千恵子)の元を訪れる。倍賞は結婚相手と北海道に移住して慣れない農業を始めたが、しばらくして夫に死なれ、女手一つで農場を切り盛りしながら男の子を育てていた。挨拶して、しばらく世間話しをした後(一泊したかも)、若夫婦は倍賞の家を後にするのだが、その車中、ハンドルを握る武田が急に泣き出すのである。そして、驚いている新妻に、「おれ、あの人を見ると、なんか、いつも可哀想になっちゃうんだよな」と言う。


このシーンに感動した。武田が唐突に泣くことで、倍賞千恵子の異郷の地で暮らす孤独、彼女の人生の薄幸さが、微かな驚きと共にグッと観客の近くに迫ってくる。また、おそらく倍賞千恵子は、武田鉄矢の初恋の人だったんだろうな、とか、夫の意外な一面を見ることで、若い二人の絆は深まるだろう、とか、そういうことまで、いろいろ考えさせられてしまう。こう言うところ、山田洋次は本当にうまいと思う。


また、武田鉄矢みたいな典型的三枚目が、いきなり泣き出して、ああいうマジなセリフを言うから、なおさら良いのである。自分は、この武田鉄也を見て、短躯短足をいつも自分で笑い飛ばしていた親戚のお兄ちゃんの事を思い出していた。


映画の採点は、6/10


ではでは

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