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◇チャップリンの「殺人狂時代」〜青髭ベルドゥー氏、法廷での最期の陳述

  • 執筆者の写真: akiyamabkk
    akiyamabkk
  • 2024年7月24日
  • 読了時間: 3分

更新日:2024年8月4日



大量殺人者「青髭」氏を演じるチャップリンの法廷での最後の陳述。チャップリンの著作権を管理する団体のYouTubeオフィシャルサイトから。


以下、チャップリンの「最後の陳述」の英語書き起こし


Verdoux: Oui, Monsieur, I have. However remiss the prosecutor has been in complimenting me, he at least admits that I have brains. Thank you Monsieur, I have. And for thirty five years I used them honestly, after that… nobody wanted them. So I was forced to go into business for myself. As for being a mass killer, does not the world encourage it? Is it not building weapons of destruction for the sole purpose of mass killing? Has it not blown unsuspecting women and little children to pieces, and done it very scientifically? As a mass killer, I am an amateur by comparison. However I do not wish to lose my temper, because very shortly I shall lose my head. Nevertheless, upon leaving this spark of earthly existence, I have this to say…..I shall see you all very soon……


チャップリンは恐らく「悔い改めないシリアルキラー」を描いた最初の映画人ではないか。もちろん「非道な戦争を風刺するため」とかいろんな理屈はつくが、チャップリンはこの映画を作った時、「本当の事を言ってしまう」快感を感じていたに違いない。


「青髭」氏はこの後、教誨師の悔い改めの誘いをキッパリと断り、少し揺れる足取りで処刑場に引かれていく。このラストシーンを見た時、「ここまで映画で描いてしまっていいのか」と衝撃を受けた。チャップリンは「独裁者」ではなく、この映画を理由の一つとして、アメリカへの入国ができなくなったと記憶する。



1945年8月12日付のNYT紙

「無防備な女子供を木っ端微塵にする破壊兵器を意図的かつ科学的に開発するモノどもに比べれば、私は、大量殺人者としてアマチュアに等しい」と、「殺人狂時代」の主人公がいう時、チャップリンの頭に広島、長崎があっただろうか。映画の公開は1947年。クランクアップは前年の9月、原爆投下のニュースは1945年8月6日の翌日にはアメリカの新聞で報道されているし、一週間後に、ニューヨークタイムズが件のキノコ雲の写真を紙面に掲載している。訪日経験もあり、親日家として知られたチャップリンが、ヒロシマ・ナガサキを念頭におかずに、「女子供を木っ端微塵にする破壊兵器」のセリフを言ったとは考えにくいのである。


現代のあるアメリカの映画評論家はこうも述べている。


「ユナイテッドアーティスト社が経営危機に瀕しているその時、チャップリンは、「街の灯」のような映画を作って、自社の立て直しを図るべきだったが、そうはしないで、アメリカ国民一人一人にヒロシマ・ナガサキの責任を負わせるような映画を作った」



もちろん「殺人狂時代」のことを言っているのである。


チャップリンの戦争批判は根底的だった。その根源性が、「正義の戦争」を終えたばかりのアメリカの逆鱗に触れたのだろう。「殺人狂時代」は、世論の激しい指弾を受けた。チャップリンは、1952年、赤狩り下のアメリカで、入国許可を取り消され、1972年にアカデミー名誉賞を受けるために再訪するまで二十年間、アメリカの地を踏むことはなかった。


この映画を、「まだしも後味よく」、予定調和的に終わらせるならば、エンディングは、ベルドゥー氏と彼が命を救った若い女性との面会シーンになるのではないか。それをしなかったチャップリンに「本当のことを言ってやろう」という明確な意思を感じる。そして、こともあろうに、この映画は、抱腹絶倒の喜劇映画でもあるのだ。抜群に笑える映画。チャップリンの最高傑作だと思う。


ではでは


追記


スターリンへの手放しの礼賛など(チャップリンが「共産主義シンパ」だったという事は濡れ衣ではなく事実だったと思う)、チャップリンもいくつも過ちを犯しているが、やはり、ものすごく先見の明があった人だと思う。我々日本人は、こういう作品を戦後すぐに作って、戦勝国の「正義の戦争」の非人道性を批判してくれたチャップリンに恩義に感じるべきではないか。


<了>



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