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タイポスト紙、印刷版全ページを高画質でネット閲覧可能に~電子版時代の「新聞紙面」の意味とは?

  • 執筆者の写真: akiyamabkk
    akiyamabkk
  • 2021年11月8日
  • 読了時間: 4分

更新日:2022年3月13日



近年、印刷版新聞紙や週刊誌の発行停止が相次いでいる。ネットアクセス数一日100万を超えるカオソット紙は、プリント版の発行をやめ、ネットに注力して、映像部門にも進出した。ネーショングループのタイ字紙コムチャットルックやポストトゥディ紙も印刷版を廃止している。


それもそのはず、近年、広告媒体としての新聞の凋落ぶりがすさまじい。この20年間で新聞への広告出稿額は三分の一以下に減り、電車広告やラジオにも抜かれて広告媒体第7位に転落している。BTS駅構内に必ずあった新聞雑誌を売るキオスクは、ネールサロンに姿を変え、街角にある露店の新聞売り場も絶滅危惧種と化した。


自分も新聞は買わずにネットで読む一人だし、時の流れだから仕方ないと思うが、ちょっと困るのは、ネットでニュースを読むと、情報の位置づけ・・・というか、重要度が直感的にわからないことである。新聞の一面は、情報がランク付けされて視覚に飛び込んで来るので、ニュース価値の軽重が即座に把握できる。一段抜きの、黒バックの見出しなど、その視覚的インパクトは相当なものである。また紙面が限られている分、作る側はニュースの選択に頭を使い、読者に何を伝えるべきか真剣に吟味するだろう。一方、ネットの場合、ニュースを無尽蔵に提供できる分、作り手側の選択は安易となり、読者を「情報の海に溺れさせる」ことになるのですね。旧世代の感覚と言われればそれまでだが。


おそらく、タイポストが印刷版のネット閲覧を可能にしたのは、こういう旧世代の読者へのサービスということだろう。印刷した新聞の一面だけをインターネットサイトに掲載する新聞は多いが(タイラット、マティチョン、デイリーニュース、ネオナー等々)、高解像度PDFで全ページを無料掲載したのはタイポストが初めてだと思う。(バンコクビズニュースがPDF版を出しているが確か有料である)左は、白黒の紙面を、そのままのピクセル数でアップしたもの。どうです、拡大しても十分に読める解像度でしょう。


ネット記事を読むことになれた世代からは、「何のことはない、見出しとレイアウトを利用した読者の誘導ではないか」と言われるかもしれないが、印象操作されたくないなら、それぞれの新聞の傾向、バイアスの方向性を頭にいれておけばいいのである。また、見出し付きで配置してくれた方が、その新聞の傾向を見抜きやすいという利点もある。


例えば「タイポスト」は、保守系の政論紙、売り物はプレオ・シーグンという編集人兼発行人の政治コラムである。黄色シャツの占拠デモ(彼らはそれを「市民的不服従運動」と呼んでいた)華やかなりしころ、デモのリーダーが、デモの現場で夜明かし参した者に、毎朝、プレオ・シーグンの論説を読み聞かしていたことを記憶している。最近浮上した刑法112条改正問題では連日のように動向を取り上げ、改正反対の立場から論陣を張っている。(右は「タイポスト」の裏表紙、第18ページ)


「マティチョン」「カオソット」は同じメディアグループに属する進歩派系の新聞。「タイ新未来党」元党首、タナトーン・チュンルンルアンキットの一族が資本参加している。端的に言えば、タクシンータナトーン支持のメディアである。「マティチョン」は知識人向けで、「タイの朝日新聞」と言えそうだが、「カオソット」は一般大衆向けで、芸能ニュースなどにも力を入れている。「ディリーニュース」は中立、面白ければそれでよし。ピンクで統一した可愛い紙面が売り物。「ネオナー」は保守系、「タイラット」は「発行部数最大」と長らくされてきた代表的大衆紙で、どちらかといえば保守系だが、コロナ失政に関しては政府に厳しい意見を述べることが多い。資金力を生かして地デジ部門にも進出している。


「ネーション」グループのタイ字紙「コンチャットルック」も保守。クーデタ―のあと、黄色シャツグループのテレビ司会者が移籍し、軍政支持のステルス的立ち位置が維持できなくなり、「進歩派」ウィングから政治的偏向を批判されていたが、最近彼らをパージして、立ち位置を修正したようだ。もっとも、これはネーショングループとそのテレビ部門の話であり、新聞にどれほどの影響が出ているのかは、最近、これらの新聞を読んでいないので詳らかにしない。


以上のように、それぞれの新聞の傾向を頭に入れておけば、多少、印象操作的な見出しに出くわしても、「お、やってる、やってる」と余裕をもって受け止めることができるわけだ。しかし、「タイポスト」、印刷バージョンを無料公開し始めたということは、印刷された新聞が経営的にほとんど意味をなさなくなったということでもあるだろう。印刷版タイポストが廃止されるのもそう遠くない将来なのかもしれない。


<了>


参考

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