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シュエココの犯罪ビジネスが1027の激震を耐え復活へ!(Frontier Myanmar より)

  • 執筆者の写真: akiyamabkk
    akiyamabkk
  • 2024年6月4日
  • 読了時間: 5分

更新日:9月14日

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‘Business is back’: BGF adapts under pressure (「違法ビジネス復活!〜カレン州国境警備隊、圧力に耐え生き残る」Frontier Myanmar 記事より) 今年4月8日付の記事である。



またしてもフロンティアミャンマーだが、自分がこの雑誌を注目し始めたのは、同誌の取材により、違法ビジネスの巣窟である巨大カジノ特区シュエココの存在が明らかになり、その異様な実態が浮き彫りになった事がきっかけである。シュエココは、いわば同誌のトクダネ、出世作なのだ。


シュエココがクローズアップされたのはある事件がきっかけだった。今から4年前の2021年、フロンティア誌の女性記者が、このカジノ特区を取材中にBGFの兵士に軟禁され、一緒にいたカメラマンが兵士から暴力を振るわれたのである。二人の解放後、BGF=カレン国境警備隊司令官が会見で公式に謝罪した時には、「ミャンマーは変わった」と思わせたものだ。しかし、それもつかの間、 与党NLD主導で国会の調査委員会がプロジェクトに本格的なメスを入れようとする矢先の2021年2月、クーデターが起きた。



※カレBGF(カレン州国境警備隊)。前身は、キリスト教徒が主流のKNU=カレン民族同盟から分派した仏教徒主体の民族組織、DKBA=Democratic Karen Budhist Army。中央政府と停戦協定を結び、国境警備隊として国軍の傘下に入っていた。軍政寄りで、長年KNUとライバル関係にある。


フロンティアミャンマーの報道後、軍関係者の処罰があり、しばらくなりを潜めていたシュエココのカジノビジネスは、クーデターによって息を吹き返す。しかし、クーデター後の混乱に乗じてフリーハンドでビジネスを拡大するというわけにはいかなかった。シュエココは、大陸系中国人をオンライン詐欺の主要なターゲットにしており、中国政府がミャンマー軍政へ取り締まりの圧力を強めていたのである。中国人をオンラインギャンブルで借金漬けにし、高収入の甘言を餌に身柄を拘束し、国境のカジノでオンライン詐欺の片棒を担がせ奴隷のように働かせるのが、シュエココのビジネスモデルだった。


中国政府は、ミャンマー軍事政権にオンラインギャンブル、詐欺の厳格な取り締まりを求め続ける。周知の通り、中国政府は、クーデター後も軍政を支援する無二のパトロンである。一方、違法ビジネスに関わる少数民族組織は、国境警備隊として表向きはミャンマー政府の傘下にあるが、実効支配の容認と兵士たちへの給与支払とを引き換えに政府に協力しているだけの、れっきとした?武装組織、軍閥である。クーデター後、政治的レジティマシーを失い、ジリジリと軍事的劣勢に追いやられている国軍、軍事政権に、断固とした取り締まりができるハズがない。


業を煮やした中国政府は、対立する少数民族組織を後押しして、中国国境で違法ビジネスを展開していた少数民族組織を駆逐する。この時、漢民族系のコカン族を中心に、カレニー族、アラカン族が加わった三派連合(Britherhood Alliance) が、軍政の軍事ポスト100箇所以上を奪取して支配地域を広げる大戦果を上げたのである。オンライン犯罪の巣窟として悪名高かったカジノも壊滅的打撃を受けた。経営していたのは、やはりコカン族系(漢民族系)の民族グループで、カレンBGFと同じように、国境警備隊として軍政の傘下に入っていた。この三派連合による大勝利は、各地の少数民族族武装勢力を勢いづかせ、その後、ミャンマー軍政は急激に軍事的劣勢に追い込まれていく。


次のターゲットはシュエココかもしれない・・・、と誰もが予想したわけだが、そこで、カレンBGFが難局にどう対応し、状況に順応して生き残りを図っているか?これが表題に挙げた特集記事のテーマである。記事を要約すると、カレンBGFは、北京語系の「カケコ」(騙されて連れてこられ、奴隷労働を強要された被害者も含まれる)を解放して中国に送還させ、詐欺オペレーションの中心を英語等の他言語圏にシフトすることで、中国政府の要求に答える一方、軍事的に弱体化した軍政とは距離を置き、反軍勢力との連携の余地を残そうとしているようである。(※ 詳細について興味のある方は、英文記事本文をお読みください。流石に、このテーマに先鞭をつけただけあって、他にはない情報があり興味深い。)


と、ここまでが、4月8日付けの当該記事がカバーしている内容だが、それから2週間後、BGF・カレン国境警備隊(あるいはKNA=カレン民族軍。カレンBGFが軍政から離脱して兵士を再編するとした民族武装組織の名称である。ああ、ややこしい)は、再び軍政と手を結び、KNLA(カレン民族同盟の軍事部門)が撤退したタイ国境の重要都市ミヤワディを掌握した。


直近の報道によると、BGFは、市内の治安維持を全面的に請け負うかたわら、国軍兵士を市内に引き入れて、アジアハイウェイ上の交通の要所を死守してるカレン民族解放軍を挟撃する作戦に手を貸しているようである。今のところ、情勢から漁夫の利を得ているのは、極めて機会主義的な動きをする、このカレン仏教徒の民族組織のようだ。軍政が主要ルートの奪還に失敗し、雨季による戦線膠着となれば、カレンBGFがまた寝返る可能性もあると思う。(中立を標榜した寝返りということになるのではないか)その時には、BGFではなく、KNAと呼ばれているだろうが。ああ、ややこしい。


<了>


※カレンBGFの首領一族については、The Irrawaddy が詳細なリポートを最近出している。




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